
昨日、特養施設にいる母上様が救急車で運ばれた。またか、で駆けつけてみると、肺炎と心不全とかで血圧を測ることすらできない危篤状態に陥った。このところ体調を崩すことが多く、そのたびに付き添いで病院通いしていた矢先のことである。いざ、というときの心の準備はしているが、職業柄、猫の手も借りたいようなときに限ってお呼びがかかる。
己の仕事は、もともと親の死に目には立ち会えない職業、と覚悟してやり始めたことではあるが、かといってほっておくわけにはいかない。
オレのババ上様は63歳の若さで、だれの手も煩わすことなく逝った。
ジジ上様は97歳までボケもしないで凛としていたが、忙しい盛りの正月に逝った。
現在、同居している父上様は5年前に、悪性ガンで半年の命と宣告され、大学病院に緊急入院。ところがそれが誤診とわかり、以来、急激に老け込んでしまった。
うまいものを最後に食べるつもりで地味に生きてきたおやじ。
反対に、うまいものは絶対先、満開のときには家族も捨て、花が散ると舞い戻ってきた身勝手なお袋。だから当然、恨んだことも憎んだこともある。しかし、妻や母親を捨ててまでも「女の性」を貫き通して生きてきたという点では羨ましくも思えるからオレという男も難解だ。そんな母上様が、今、その生涯の終焉を迎えようとしている。
大方の人は「おやじさんは仏さんのようなひと」という。オレもそう思っている。だけど、幸か不幸かオレはお袋と同じ血が流れているらしい。
かといって、間違っても後悔なんぞするつもりはない。わがまま人生、けっこう毛だらけ、ネコ、灰だらけ、ケツのまわりはクソだらけや。