
このところ、一定しない天気や、次から次と出てくる雑用等で、工事途中になっている佐々木道場建設にも行けず、フラストレーションがたまっている。
そんな昨夜、オレの好物の生センマイと生レバーとユッケを持ってヒロシ父子が残雪の山道をやってきた。
ヒロシとは16年前に、うちで結婚してからのつきあいになる。当時は、真冬でもワイシャツ一枚で汗をかきながら、毎晩のように一生酒を呑るほどの豪傑だった。若さと体力にまかせて、仕事も酒もやり過ぎて脳内出血を起こし闘病生活に入るも、奇跡の復活を果たし、言語障害の後遺症はあるものの、精一杯生きている。オレとの会話は首から提げた白板とペンが便りであり、最近の話題は長男、ヨシヒロの高校進学だ。学業成績は自慢できないレベルらしいが、ムシとか川魚に関する知識なら誰もが舌をまくほど。よって農業高校に入学させるのが、ヒロシ家の目下の目標となっている。そのヨシヒロを将来、本物のムシ博士、いや、大学教授にすべく、オレも微力ながら一肌脱いでいる。
最近は「おやじも病院で頭の検査をしろ」と、ヒロシから忠告されるようになった。彼のようなフアンがいてくれるうちは、もう歳だとか、疲れたとか、後継者がいない、などと、弱音を吐くわけにはゆかないだろう。