
あれは2人が一緒になる覚悟を何度も確認し合っていた頃の話だ。
今と同じ2月頃の寒い夜にオレは、再度、再度、再々度、神戸に出向いて行った。真夜中の高速道路を約3時間走り続けてぼろぼろになって辿り着いたオレ。残業疲れの中、待ちに待ちくたびれている彼女。
とりあえず落ち着きたいの一心で目の前に出てきた大きなシティーホテルに車を入れた。ただっ広いロビーのあちこちで人形みたいな化粧したコギャルや、ジーンズを尻までズらしたガキンチョたちが携帯電話を手にして遊んでいる。彼女の話ではかなりの高級Hだそうだが、オレにはそうは思えなかった。
若いフロント係りが「ダブルでもツインでもおとりできます」といったあと、奥の誰かに呼ばれて「少々、お待ちを」と引っ込んだ。待つこと数分。やっと出てきたと思ったら今度は「申し訳ありませんが・・・」ときたではないか。なんやて? ならさっきの「おとりできます」は、なんやったんやねん。なんとオレたちは宿泊拒否をされたのである。
考えてみれば、白髪の白ヒゲの男が、娘のごときバリバリのキャリアウーマンと、それも深夜の2時、3時にダブルの部屋を、ともなれば不倫、援交、売買春・・・かと疑われても仕方ないかも。だが、もし「父娘」の関係に視えたのなら同部屋もあり得る話だ。しかし、しかし、しかしだなぁ、宿泊拒否をされたということは「男と女」の関係に視えたということになる。―ということは、オレもまだまだ、まんざらでもないということになるのかぁ。

わがHPに「ひげカップル」というコーナーがある。
初めての人は、なにこれ? となるらしいが、宿泊客全員が描いているわけではないから、ご安心を。
ところでヒゲにもいろいろあって、男らしさや威厳を象徴するのもあれば、ファッションや、なんとなく・・・というのもある。げんかつぎ、心機一転のためというのもある。たかがヒゲ、されどヒゲである。
うちの場合はユーモアが目的だ。出身地も、言葉も、職業も、世代も異なる初対面の人たちが対等の立場になり、いつもと違った楽しい一夜を過ごすための手段であり、基本的には、自らすすんでリクエストしてくる相手に限って、それもヒゲだけというのが条件である。無理やりとか落書きはご法度だ。
オレは一つ覚えのような意味不明のピースポーズをとった写真が好キクない。このての写真は一度見れば、まず、お蔵になるのが関の山。何度も見返してもらえないのは、メモリアル性に欠けているからではないだろうか。今や、「早くヒゲ描こうよ」とお客さんの方から催促してくるくらいの名物行事となっている。だったら、これからも大いにリクエストに応えていくしかないだろう。
オレはこの山生活に入った39歳のときに突然、頭もヒゲも真っ白になってしまった。以来、白ヒゲおやじより似合っているヒゲ男はいないと周囲に乗せられてきた。だが、オレが惚れ惚れするヒゲ女はいっぱいいる。その証拠に、数え切れないほどの写真を残しているから見においで。

雪花が舞う中、例のラーメン予約をもらっていたAPさん夫婦と稔ゅー君がやって来た。先日のマサル君に続いて二番目のラーメン客である。
売り物の大きなどんぶりを見せると仰天して絶句した。仕方なく普通サイズとギョウザ6個でいくことにした。当然、オレたち夫婦は大どんぶりとギョーザ30個がいつものコースである。
稔ゅー君は「マジー!? これー。すっげー! うまっそー!」を連発しながら写真を撮っていた。
「残されると処理に困るからスープの一滴まで食いらげてくれ」に応えようとしてAPさん夫婦はしゃべる余裕なく死に物狂いで食べてくれた。
ところが、帰り際に「いくらもらうか」で相談になった。枚方のシンちゃんが「大阪なら1.000でも列ができる」というとった、というと、「いんじゃないのぉ。それだけの価値はある」で、1.000払ってくれた。
確かにうちのラーメンはそんじょそこらのラーメンとは中身が違う。うどんなんかとは材料も違うし、手間ひまもかかる。その上、バリウマとくる。「ラーメン+ギョーザ+コーヒー」のセットで 1.500くらいなら当然かも。
きょうはなんとか五人分作ったが、これが限度だろう。一日五人前限定でいくしかないようだ。
ところで未だにネーミングに迷っている。オレたち夫婦の共通した名前から「純生味噌ラーメン」とか、マサル君が考えてくれた「南米仕込みのアマゾネスラーメン」なんかも面白いけど・・・。

数日前、アクセス道の道標の一つが引っこ抜かれていたのを発見して、即日、立て直してきたら、その近くの国道沿いの四差路に設置している畳一枚分もある大型看板も被害を受けていた。「マウンテンドームまであと9km」の表示を、なんとバーナーで焦がして削り取るという悪質極まりないやり方である。若かった頃と違って最近はひとに怨まれるようなことをした覚えがない。しかしやり方がやり方だけにムカつくことしきりだ。こんなことをしてなんの得があるのか。
昔、近くの山中でダンボール一杯の花火を打ち上げていたキャンパーたちに注意したら、翌日、いくつもの道標が裏を向いていたことがあった。コンチクショー!
「自然を守ろう」と唱えた選挙ポスターを、うちの看板の上に貼って落選した元国会議員もいた。自業自得だ!
マウンテンとドームの間に「コン」と書き込んだおもろい輩もいた。
そんなわけで、このての相手とは20年間、いたちごっこである。頼りになる騎兵隊か保安官でもいてくれたら。