
このところ毎日のように競馬やパチンコ必勝法なるものがメールで送られてくる。そんなもので安易に勝てると思ったら大間違いだ。
昔、昔、大昔、大学近くの雀荘で、「学生さん、ちょっと」と、ある長身の男の人に誘われ、雀卓を囲んだことがあった。その男性とは、オレの子ども時代に一世を風靡していた東宝映画の看板男優、宝田明氏である。
その麻雀の最中にテレビのニュース速報で流れたのが、あの「三億円強奪事件」だった。オレは日本の犯罪史上に残る記念すべき日に芸能人と麻雀をやっていたのである。
その後ミュージシャンになってから、グループのメンバー沢村和子(現在のジャズシンガー沢村マミ)ちゃんの姉、沢村美司子(今は亡きジャズシンガー)さんに誘われて、弘田三枝子、清川虹子さんらと麻雀をやったこともある。相手が芸能人、それも女性ばかり・・・と、なめてかかり、最初から役満オンリー狙いのおふざけ麻雀に徹していたら、あっというまに「国士無双」完成。以後、お声がかからなくなった。
ミュージシャンをやめてから、遅ればせながらの大学卒業を目指していた頃、雀荘での徹夜麻雀の最中に警察に踏み込まれ、誰か知らない人と二人で、やぐらこたつの蒲団の中に隠れたことがあった。後でわかったことだが、誰かとは某893の若親分(早稲田大出身の三十歳くらいのカッコいい人)で、その夜の偶然の出逢いから仲良くなり、彼の子分がオレのアパートまで誘いに来るほどの付き合い麻雀が始まった。ところが相手は高倉健や菅原文太みたいなその世界の大スターたち。オレは大学5年の貧乏学生。よってオレが勝てば即金で支払ってくれるが負けた場合はとられない、というこのうえない恵まれたルール。
ある時、オレはその若親分相手に数十万勝っていた。当時は大卒の初任給が4〜5万のときである。だからとんでもない大勝ちをしていたのだ。よって数日間は家には帰っていない。油切った顔に鼻の下は真っ黄色で両手の指は痩せ細っている。アパートでオレの帰りを待つ女房(既に学生結婚していた)のことなど全く頭になかった。親分たちは傍に派手な女たちをはべらかせ、寿司にタバコにおしぼり付きのサービスをやらせていた。オレは得意のラーメンライス。親分の形勢が悪くなると、その着物姿の女たちが立て膝して太ももの奥をオレにチラリと見せるからたまらない。大三元や国士無双の聴牌時と同じような大きな鼓動に耐えながらも、オレは脇目も振らずに学費と生活費を稼ごうと夢中になっていた。
―と突然、オレの正面にあるドアが音もなく開いた。そこには涙を溜めた愛妻が立っていた。その瞬間から集中力を欠いたオレは数時間でそれまでの勝ち分を一気に吐き出し、すっ殻カンで女房のもとに舞い戻った。このときのオレは、本気で麻雀からきっぱりと足を洗おうと決心した・・・はずだった。 ―続く―
〔写真は今年の初霜で真っ白になった夢パパ�〕